小沢一郎のコンプレックス
- 作者: テリー伊藤
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 1996/06
- メディア: 単行本
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P.101
テリー じゃあ小沢一郎はどうなんですか!?
大蔵 小沢はもっと怖くない。国民福祉税をやってくれたのは誰ですか。小沢一郎その人でしょう。小沢一郎は橋龍と同じ慶應なんですけど、彼のコンプレックスは橋龍とまったく違うんだな。彼のことは、われわれも一時期非常に警戒したので、橋龍よりももっと詳しく研究したんですよ。研究した結果どういうことがわかったかというと、彼のキーワードは本当に徹底して「コンプレックス」なんです。
コンプレックスの始まりは都立小石川高校へ転学してからです。当時の都立小石川高校といったら、いまの開成・麻布・武蔵の私立御三家と同じくらいのすごい高校だった。東大にどんどん行く。そこにまず岩手から東北弁で現れた。話が通じません。そこで味わったコンプレックスを東大受験で見返そうと思ったが、東大に落ちて浪人。ところが二浪しても受からなかった。やむを得ず慶應に行きました。慶応に行って、そこで彼は考えた、司法試験を受けようと。司法試験を受けて見返そう。東大卒業したって司法試験に受かるとはかぎらない。ところが司法試験も落ちた。どうにもならなくなって、とにかく日大の大学院に行って司法試験を受けたけれども、やっぱりだめだった。
だから、小沢さんが一番興奮するのは、法律の話を出された時です。「法律論からいったらこうなります」といったら、小沢さんはものすごく興奮する。
P.102
大蔵 それからもちろん東大コンプレックスがある。小沢さんはわれわれに会うと必ず、「君は何期かね、東大は何番だ」と聞くんです。
P.104
大蔵 小沢さんが政策通として初めて世に出したのは『日本改造計画』という本でしょう。それまで政策なんて全然小沢センセイのイメージになかった。
- 作者: 小沢一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/05/21
- メディア: ハードカバー
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あのベストセラーの前書きに不思議なことが書いてある。「アメリカは一人ひとりが責任を持つ社会で、日本は個人が責任を持たない社会だ。その証拠にアメリカのグランドキャニオンには柵がない。グランドキャニオンから落ちるともちろん死ぬ。これは、リスクというものは自らの責任において考えなさいということがあって、日本人の甘えた社会とこれほど違っている」という趣旨の話ですね。
これは大嘘です。実際は、柵はちゃんとあります。柵が立っていないのは、観光客の入らないところだけです。グランドキャニオンには毎日、たくさんの日本人観光客が入るわけだから、この前書きを読んで首をかしげる人は多いはずです。一体なぜ、こんなバカなことが書いてあるのか。
あの本は、実は、官僚と新聞記者の合作なんですよ。小沢さんという人は、東大出のいうことは何も確認しないで信じてしまうということをちょっと利用させていただいた、われわれのイタズラなんです。小沢さんという人は、恐ろしく単純なアメリカ崇拝論者だから、それをからかったんです。そして、その本の顔である前書きで、わかる人には「この本おかしいぞ」とわかってほしいというひそかな願いもこめてね。
これは余談ですけど、われわれが怖いと思ってるのは、小沢センセイの本音は日本改造ではなくて日本人改造にあるらしいということなんですよ。小沢さんがこの前書きの部分をすごく気に入ったのは、要するに日本人の意識に関することだったからなんです。小沢さんがいっていることは簡単なことで、日本人は性根が無責任だ、根性を叩き直してやる、ということだけ。日本人改造計画。昔、角さんがやった『日本列島改造論』、あれもすべて大蔵官僚とマスコミが書いたんですけれども、それのまったく二番煎じなんだけれども、小沢さんの場合は、日本人そのものを変えようとしている。それは大蔵官僚としても一国民としては無気味な怖さを感じるわけですよ。あの人のコンプレックス人生がついに行き着くとこまで行くかもしれない。劣等感の裏返しで、日本人を全部改造してしまうつもりなんじゃないか。